非常用放送設備が必要となる建物は、消防法で定める収容人員(建物用途によって異なる)によって決まります。例えば、ホテルや商業施設の場合、300人以上となったら、設置が義務となります。建物の意匠性に配慮するためには、選定する「スピーカー」を如何に、デザインにマッチしたものとするかが重要となります。今回は、「非常用放送設備のスピーカー」に着目し、どのようなデザインのものがあるかを紹介します。
◆目次
- 気づき1(屋外スピーカー)
- 各社の比較1(屋外スピーカー)
- 事例1(指定色塗装)
- 気づき2(屋内スピーカー)
- 各社の比較2(屋内スピーカー)
- 事例2(小口径スピーカーの選定)
- まとめ(勘所)
◆気づき1(屋外スピーカー)
下記の写真は、ホテルのエントランス前にある、車寄せの為の庇に設置されている、非常放送用のスピーカーです。茶色のパネルに白色のスピーカーが目立ってしまっています。最近までは、屋外用のスピーカーは「アイボリー色(クリーム色)」しか販売されておらず、スピーカーの形も各社1種類のみという、意匠泣かせの状態です。今回は、屋内と屋外の事例を基に、スピーカー選びの為の、各社のラインナップを紹介します。
◆各社の比較1(屋外スピーカー)
まずは、現在(2023年8月時点)の屋外スピーカーのラインナップは、下記のとおりです。調べていて驚いたのですが、長年、ラインナップが変わらなかった屋外スピーカーでしたが、ついにJVCケンウッド様から、スタイリッシュな屋外スピーカーが発売されたとのことです。かなりの朗報だと思いますので、共有させていただきます。
スピーカー1 | スピーカー2 | スピーカー3 【NEW】 | スピーカー4 【NEW】 | |
会社 | TOA | JVCケンウッド | JVCケンウッド | JVCケンウッド |
商品画像 ※引用元は下記の通り | ||||
用途 | 屋外 | 屋外 | 屋外 | 屋外 |
サイズ | φ220×80.5(H)mm | φ230×78(H)mm | φ150×92(H)mm | φ150×92(H)mm |
※画像引用元:TOA株式会社様のホームページ
天井スピーカー | スピーカー | TOA株式会社
※画像引用元:株式会社JVCケンウッド様のホームページ
スピーカー(放送設備) | JVC
◆事例1(メーカーによる指定色塗装)
下記の写真は、先ほどのアイボリー色のスピーカーの状態から、茶色に塗りなおしてもらった写真です。ホテルのエントランスの「顔」となる部分の為、目に見えるすべての箇所に気を遣う必要があったため、少し時間はかかりましたが(およそ3カ月ぐらい)、メーカーへ依頼し、庇と同色系に塗って頂いたものです。
指定色塗装をする場合は、もちろん通常価格の2倍以上(施工会社様に依ります)のコストがかかる為、事前に設計図書に「指定色塗装」である旨を記載しておく必要があります。
◆気づき2(屋内スピーカー)
下記の写真は、マンションの中廊下の天井に、「パネル径φ180mm」のスピーカーを設置している写真です。なお、以前までは、屋内のスピーカーといえば「パネル径φ180mm」のスピーカーであったのですが、最近は「パネル径φ120mm」のものが販売されております。その為、この空間においては、スピーカーが主張する必要は無いと思いと考える為、φ120mmのスピーカーを選択すれば良かったと思います。
◆各社の比較2(屋内スピーカー)
現在(2023年8月時点)の屋内の代表的なスピーカーのラインナップは、下記のとおりです。小口径のパネルのタイプ(スピーカー2と4)でも、メーカーによってはサイズに違いがあり、通常の大きさであるφ180mmのタイプでも、TOAとJVCで、枠のデザインに違いがあることが分かると思います。
スピーカー1 | スピーカー2 【NEW】 | スピーカー3 | スピーカー4 【NEW】 | |
会社 | TOA | TOA | JVCケンウッド | JVCケンウッド |
商品画像 ※引用元は下記の通り | ||||
用途 | 天井埋込 | 天井埋込 | 天井埋込 | 天井埋込 |
サイズ | φ180mm | φ120mm | φ180mm | φ112mm |
色 (アルミ) | 白、黒、 シルバー | 白、黒 | 白、シルバー、 アイボリー | 白、黒 |
コスト (定価) | 約1万円 | 約1.1万円 | 約1万円 | 約1.1万円 |
※画像引用元:TOA株式会社様のホームページ
天井スピーカー | スピーカー | TOA株式会社
※画像引用元:株式会社JVCケンウッド様のホームページ
スピーカー(放送設備) | JVC
◆事例2(小口径スピーカーの採用)
下記の写真は、ホテルの客室にて、小口径のスピーカー(パネル黒色)を採用している写真です。一番手前の黒丸のものがスピーカーです。スプリンクラーヘッド(φ60程度)やダウンライト(φ80mm)、非常照明(φ72mm)と比較しても、さほど目立たず、上手に天井に溶け込んでいるかと思います。
◆まとめ(勘所)
今回は、非常用放送設備の「スピーカー」の意匠配慮方法について、紹介いたしました。日本で、非常放送設備と言えば、主にTOAさんとJVCさんが挙げられます。両社のラインナップを頭に入れておくことが、意匠デザインへの配慮に繋がると思います。
<勘所> ・屋外スピーカーは、種類が少ないため、兎にも角にも「指定色塗装」とする。 ・屋内スピーカーは、小口径プレートを選ぶ。
以上、本ブログが皆様のお役に立てればと思います。
また投稿いたします。
KC